スフェーンとはどんな宝石？

虹色の強い輝きが人気のレアストーン、スフェーン。ギリシャ語でくさびを指すスフェーンという名は、結晶がくさびの形をしていることからつけられました。和名もくさび石といい、チタンを含むことからチタン石＝チタナイトとも呼ばれています。

強いファイアと呼ばれる虹色の強い輝きを発しますが、これは分散度が高いため。一条の光線をとらえ、虹色のスペクトル色にするという珍しい性質があるのです。これは宝石学上「ディスパーション」と呼ばれる特徴ですが、スフェーンはダイヤモンドに勝るディスパーションを放ちます。ディスパーション（分光）とは宝石に入射した白色光が宝石内部で屈折と反射を繰り返し、赤色や黄色など白色光を構成する各々の光のスペクトルに分解され虹色を示すこと。宝飾用語で「ファイア」とも呼ばれています。

このディスパーションと強い多色性によって、スフェーンは色が変化するように見えます。ピンクやブラック、チョコレート色なども稀にありますが、主にイエローからグリーンのものが多く、マスカットグリーンやライムグリーンの明るい黄緑色に人気があります。そこに虹の色が強い輝きとなってきらめいているのです。

透明度の高い石はダイヤモンドよりも輝くといわれ、人気のあるスフェーンですが、モース硬度は5から5.5とやや低く、ルースとして扱うには注意が必要です。宝石としては黄色から緑の透明度の高いものが使われ、大きな結晶は希少性があるためカットされず、そのまま収蔵されることが多いのも特徴的です。また、工業的には二酸化チタンの素材として使われ、塗料や顔料となるほか、フィッショントラック法で放射年代測定のため使われることもあります。