4月の誕生石「モルガナイト」 〜Morganite〜
モルガナイトとはどんな宝石?
淡いサーモンピンクが可憐なモルガナイト。大きな癒しの力を持つ透明感にあふれた宝石です。モルガナイトはベリルという鉱物で、エメラルドやアクアマリンと同じ仲間です。緑色のベリルをエメラルド、水色のベリルをアクアマリンと呼ぶように、ピンクのベリルをモルガナイトと呼んでいるのです。モルガナイトの淡いピンク色は含有される微量のマンガンやセシウムによるもの。オレンジがかったピンクや紫がかったライラックピンクなど、さまざまなニュアンスのピンク色のバリエーションがたくさんあります。
幅広い色調を示すのがベリル特徴の一つで、青のアクアマリン、赤いレッドベリル、緑のエメラルド、ホワイトベリルとも呼ばれる無色のゴッシェナイト、黄色がかった緑のヘリオドールなどが代表的です。その他の色のものについてはイエローベリルなど、ベリルの前に色の名前をつけて呼んでいます。
ベリルの仲間には、インクルージョン(内包物)によって現れるシャトヤンシー効果を持つものもあり、猫の目のような一条の光が現れるキャッツアイ効果や、交差した光の筋が宝石の表面に現れるスター効果を見せるものにはカボションカットを施されます。また緑のベリルであるエメラルドにはトラピッチェという亀の甲のような模様を持つレアストーンもあります。
古代ギリシャ語で海水の高貴な青緑色を意味する「ベリロス」に由来するベリルの名前ですが、もともとベリロスは緑色の宝石すべてを指す言葉だったといいます。ベリルは通常、プリズム状の完璧な六方晶系六角柱状をしていて、大きなものは8メートルもあります。ただ、ジュエリーに使えるだけの品質を持っているものは限られています。
モルガナイトには多色性という性質があります。一つの石の中にいくつかの異なる色合いのピンク色を示すので、カットする際に原石の方向を慎重に見定めて加工されます。同じ結晶の中に2色が存在するバイカラーや3色が存在するトリカラーの個体もあります。一般的に最上品質の色は大きな個体で見られます。
桜色のモルガナイトは、日本人の肌によくなじむことから近年とても人気のある宝石で、2021年に新誕生石に加えられてからは、さらに注目が集まっています。ペンダントやネックレスはデコルテに瑞々しい輝きを添えてくれます。また、リングは自分で眺めて癒されるので取り入れる人が多いようです。水を含んだような透明感と、淡く美しいピンク色の一粒は、いつまでも見ていたくなる魅力に満ちています。ドレスアップに似合う宝石ですが、毎日の装いにも取り入れやすい色合いで、比較的硬度が高く耐久性もあることがポイントです。
モルガナイトの歴史
モルガナイトの名はJ.P.モルガン氏にちなんで名付けられました。モルガン氏は20世紀初頭のアメリカの銀行家で、熱心な宝石コレクターとして知られています。マダガスカルで1910年にローズベリルが発見され、新たな産地として注目を浴びましたが、アメリカの鉱物学者のクンツ博士がこのローズベリルを、彼の友人であるモルガン氏の名誉を称えるために「モルガナイト」と命名することを、ニューヨーク科学アカデミーの会合で提案しました。モルガン氏の宝石コレクションの一部は宝石商のティファニーと、そのチーフ宝石鑑定士を務めていたクンツ博士によって組み立てられていました。
モルガナイトの結晶には非常に大きなものがあり、ブラジルでは10キロ以上の重さのものが産出されたこともあります。1989年の10月7日にアメリカ北部のメイン州バックフィールドのベネット採石で発見された個体は最大の標本の1つ。オレンジがかったピンクで、長さはおよそ23センチから30センチあり「メイン州ローズ」と呼ばれました。ワシントンD.C.にあるスミソニアン学術協会のコレクションには、236カラットと250カラットの重さのファセットカットされたものがあります。多くの宝石と同様にペグマタイト鉱床で発見されることが多いようです。